レゾナックホールディングスは、日本で初めて300ミリメートル級のシリコンカーバイド(SiC)基板を開発したと月曜に発表した。現行より小さい基板と比べ、1枚あたりおおよそ4倍のデバイスを切り出せる見込みで、電気自動車、データセンターの電源、産業用インバータなどでコスト競争力の改善が期待される。
2023年に昭和電工系事業と統合された東京の材料サプライヤーは、高耐圧・高耐熱のSiCが世界的に不足しやすい背景で、欠陥の少ない大型単結晶の育成が長年の課題だとされていた。同社は今回の成果で、パワー半導体メーカーが求める次世代サイズの国内供給選択肢を増やしたとしている。
基板サイズが意味すること
150ミリや200ミリから300ミリへ移行すれば、一般シリコンで進めた大口径化と同様に、工程の固定費をより多くのチップに分散できる。日経アジアは、レゾナックが国内初の300ミリSiC基板を実現したと報じ、米国・中国の競合と同じ開発段階に入ったとみている。一方で、試作ウエハーが量産ラインに載るまでには、スライスや研磨、エピタキシャル成長での割れや欠陥管理が問われ、商用化の具体的な時期はまだ示されていない。
経済産業省が支援する材料・装置エコシステムの文脈では、基板の大型化は輸入依存を下げる材料政策の目標とも重なる。ただし業界アナリストは、実験室での成功と自動車メーカーが署名する量産契約の間には、しばしば数年のギャップがあると指摘する。
サプライチェーンと顧客評価
パワーデバイスメーカーは、サンプル基板の面内均一性と信頼性試験を経てからファブ改修を決める。レゾナックが示す必要なのは、広い面でも結晶品質が安定していることであり、それが熊本など国内の半導体集積地に近い材料供給網を強化するかが投資家の焦点になる。
統合デバイスメーカーやファウンドリとの共同開発契約が成立すれば、カタログ製品化が加速する。逆に、限られた戦略顧客向けの特注に留まれば、設備投資回収の見通しは不透明になる。
競争と次の段階
世界のSiC大手はすでに200ミリ・300ミリのロードマップを公表しており、今回の発表は新規カテゴリの創出というより、最前線の開発競争に加わったことを示す。800ボルトアーキテクチャを進める自動車メーカーとの共同評価、歩留まりデータ、設備投資計画が、見出しを実需に結びつけるかどうかを決める。
顧客認証が完了するまで、これは材料科学のマイルストーンにとどまる。歩留まりが維持されれば、電気自動車とAI向け電源のボトルネックとなりやすい層で、日本国内の選択肢が一つ増えることになる。