発電網や鉄道など重要インフラを標的とするサイバー攻撃が深刻化する中、敵対的なサーバーを被害発生前に無力化できるよう定めた日本の法制度が1日に施行された。2025年5月に成立した一連の規定は、政府が「主要国と同等の能動的防衛」が必要だと説明してきた政策の柱となる。

新法は、警察と自衛隊が海外のサーバーにアクセスして無力化する先制措置を認めるとともに、指定された重要インフラ事業者にサイバー侵害の政府への報告を義務付ける。公官民の協議体も発足し、脅威情報の共有手続きが強化される。

承認の流れ

攻撃の兆候や事業者からの警告を受けた場合、国家安全保障会議が先制措置の要否を審議する。札幌高裁長官を務めた近藤紘子氏が委員長を務める「能動的サイバー防御監視委員会」が最終許可を出す仕組みで、通信監視を巡るプライバシー論争を受けた国会の妥協案がそのまま運用に移る。

官房長官木原稔氏は施行前の会見で、無力化権限の追加により「我が国を標的とするサイバー攻撃に実効的に対応できる」と述べた。高市早苗首相も社交メディアで、受動的な防御だけでは不十分だと強調した。

報告義務と対象

電力、鉄道、通信など政府が指定する事業者は、侵害が疑われる事案を当局へ報告しなければならない。製造業や地方自治体を狙うランサムウェアが増える中、報告遅延は行政指導や説明責任を招くリスクとなる。

同日発足した協議体は、各府省や民間ベンダーの情報を一元的に扱い、従来の縦割りで遅れた初動を短縮することを目的とする。

今後の段階

通信トラフィックの常時監視を想定した本格運用は2027年を目指すとされ、それまでは特定サーバーへの限定的な措置が中心となる。野党や市民団体は、海外サーバーへの介入が民間と軍の線引きを曖昧にすると警告してきたが、独立委員会の許可がその歯止めとして位置づけられている。

周辺情勢

北朝鮮系や犯罪グループによる日本の港湾・航空関連下請け、暗号資産取引所への攻撃が続くなか、同盟国もサプライチェーン防衛を強化している。初の無力化命令が下された際、運用方法を示さずに国民の理解を得られるかが試される。

企業のセキュリティ責任者にとって施行日は、インシデント手順に政府報告ルートを組み込む実務的な節目だ。パッチ適用やネットワーク分離の重要性は変わらないが、国内制御系へ感染が広がる前に外国経由の踏み台を止める法的根拠が整った点が新しい。