ロシア極東のサハリン州は、日本が北方領土と呼ぶ択捉島で、中国黒竜江省の地方官と経済界代表団の視察を受けた。観光や水産加工の投資候補地を巡る訪問は、ロシア実効支配の四島をめぐる日ロ対立に、中国の関与という新たな要素を加えた。

サハリン州のリマレンコ知事は、北方四島を含む千島列島に観光・産業の潜在力があると強調し、投資環境を整える方針を示した。時事通信社やジャパンタイムズが伝えた州政府発表によると、ロシアと国境を接する黒竜江省の代表は、ウニやナマコの養殖や地元企業との水産加工施設設置に関心を示し、観光インフラの候補地も視察した。

免税特区とプーチン首相の択捉訪問

ロシアは2022年に千島列島を法人税免除の特別ゾーンに指定し、外国企業にも優遇を与えている。ウラジーミル・プーチン大統領は8月に択捉を訪れ、水産工場などを視察し、開発継続の意向を示した。

高市首相は当時の訪問を「全く受け入れられない」と批判し、ロシア側は東京の抗議を退けた。四島は終戦時に旧ソ連に占領され、日本は返還を求め続け、平和条約も未締結のままだ。

高市首相の対応表明

高市首相は14日、官邸で記者団に対し、黒竜江省代表団の択捉訪問の実態確認を進め、「我が国の立場に沿って適切に対応する」と述べた。具体的な外交手段は示さなかったが、第三国の経済活動は軍事演習より抗議が難しく、外務省は主に声明とG7連携で対応する構図だ。

水産と観光の意味

州政府は海産物と宿泊施設といった生活基盤産業を前面に出し、定住を増やす狙いがある。ロシアにとって黒竜江は近接パートナーだが、日本にとっては支配固着の象徴でもある。

外務省の幹部はロシア側の四島関連行動には抗議文を出し続けているが、中国の地方代表団については北京との広範な議題の中でどこまで強く言うかは難しい。経済安全保障担当相は国会答弁で、重要鉱物やサプライチェーンの観点から北方海域の動きを注視する旨を繰り返している。

サハリン州の発表は、代表団が観光宿泊施設の候補地も見たと付け加えた。千島列島では宿泊不足が指摘され、ロシア国内からの観光客増を州政府が後押ししている。日本側の観光業界団体は、北方四島を巡る旅行商品の扱いについて政府に説明を求める動きもある。

野党は北京に対し地方代表団の派遣抑制を求めたかを追及するだろう。ウクライナ制裁下でロシア・中国経済協力が進む中、東京の外交手段は主に声明と多国間調整に限られる。法的地位は変わらないが、台湾や東シナ海の巡視船問題と並び、領土問題が再び焦点になった。

高市首相は8月のプーチン訪問時と同様、今回も事実確認を優先する姿勢を示した。ロシア外務省は過去、日本の抗議を「干渉」と切り返しており、中国側の公式コメントはまだ限定的だ。今後、外務省の局長級会議や首脳会談の場で、黒竜江省代表の択捉視察が議題に上るかどうかが注目される。